川越祭りの話をする際に、日常的にはあまり使われない言葉、聞きなれない言葉が使われることが多く見受けられます。
ここでは、皆さまのお役に立てればと、そのような言葉を祭りの説明時などに使われる「川越祭り関連用語」、山車の説明などに使われる「山車・建築関連用語」に分け、簡単な解説を試みてみました。
※ ここでの解説は、旭町三丁目信綱會版であり、全国共通のものではありません(各地、各団体で異なった解釈、定義のもとに使用しておりますのでご注意ください)
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(あ)
移動:いどう
山車を、曳き綱を曳かない状態で動かすこと。台車をかませる場合と、そのまま移動させる場合がある。
岩境:いわさか、磐境
古代の神籬(ひもろぎ)、依り代(よりしろ)。磐座(いわくら)と同様のものとして使用されるが、天然の岩の他、人工的に置かれた石も指す。
氏子:うじこ
祖神(そしん)である氏神(うじがみ)の子孫、産土神(うぶすながみ)の鎮守(ちんじゅ)する土地に住んでおり産土神を祭る人を氏子という。
氏子域:うじこいき
各神社の慣習的な祭祀圏(さいしけん)。氏子の住んでいる土地。
ウマ:うま
山車を固定する際に、山車を乗せる台。
運行:うんこう
町内における、祭り全体の運営、進行、管理。
曵行:えいこう
山車を、曳き綱を曳いて動かすこと。
お焚き上げ:おたきあげ
大切なもの、粗末にできないものなどを寺社で焼くこと。もとは神事の際に庭で焚いたかがり火。神社では焼くことで天に返すと考えられてきた。後に寺でも行われるようになり、故人のものを焼くことで故人に返すとした。
御旅所:おたびしょ
神幸(じんこう)の際、神霊(しんれい)を借りに安置する場所。神幸祭は神輿が御旅所まで行き、そこに一時安置された後、神社に帰る。
御花代:おはなだい
祭りを祝う、御厚志。基本的に祭りは、御花代によって費用をまかなわれている。
御日待ち:おひまち
本来は神事の一つとして、決められた日の夕方に皆が集い、飲食をともにしながら日が明け、日の出を拝するもの。宗教的な講(こう)である御日待ち講の集会。現在は、祭りの後日に行われる慰労会を指すことが多い。
(か)
会所:かいしょ
祭り期間中の町の本部。祭壇を作り、祭りの中心的施設となる。休憩所は詰め所と呼ばれ、本来は会所と区別される。他町域を山車が通る際は、先触れ(さきぶれ)がその町の会所に渉り(わたり)をかけ、その後、山車で挨拶に赴く。渉りをかけられた町は、会所から出迎え人を派遣。山車行列を案内する。山車の挨拶を受けた後は、町境まで見送り人を出す。都合により、出迎え人、見送り人を出さないこともある。
会所開き:かいしょびらき
会所の祭壇に神を迎え、正式に会所とする儀式。
笠ぬぎ:かさぬぎ
祭禮(さいれい)納めの儀のこと。
笠渡し:かさわたし
祭禮初めの儀のこと。
頭:かしら
鳶(とび)の責任者。鳶頭。山車の操作は、宰領(さいりょう)の意図を伝えられた頭が、職方(しょっかた)に指示して行われる。
金棒:かなぼう
じゃらん棒のこと。
川越締め:かわごえじめ
三・三・一のリズムでゆっくりと打たれる、川越独自の手締め。川越は商人が多いため、三・三・三・一の江戸締めを十締め(とおじめ)つまり戸を閉めるにつながるとして嫌ったとの説がある。
還御:かんぎょ
神幸祭(じんこうさい)において、御旅所(おたびしょ)から神社へ帰る道。神幸祭では、神輿に乗った神霊(しんれい)は氏子域(うじこいき)を回るため、神社から御旅所へ行く道と、帰る道は違う。
着物:きもの
祭り衣装。町方(まちかた)は曵行(えいこう)時には尻を端折るが、囃子方(はやしかた)は着流しのまま。町ごとに揃いの着物がある。
木遣り:きやり
山車を曳き出す際と収める際に歌う祝い唄。頭(かしら)の独唱から始まり、途中みなでの合唱となる。「さらば」の声が入ったタイミングで「始めの囃子(はやし)」「納めの囃子」が入る。
切組:きりくみ
山車の組み立て。従来は、山車はばらされて保管され、祭り前に組み立てらえていた。最近は山車を組んだまま保管する町が多い。
キリン:きりん
山車が方向転換をする際やウマをかける際、山車を持ち上げるためのジャッキ。
儀礼打ち:ぎれいうち
相互の連帯強化、挨拶のために囃子(はやし)を打ち合うこと。川越祭りでは、各山車が他町へ挨拶に向かうために、それぞれ違う巡行路を通るため、山車と山車が辻(つじ)などで出会うことがある。この時に互いに儀礼打ちをすることを申し合わせたのが、曳っかわせのはじまりである。
警護:けいご
曳き手や職方(しょっかた)を観光客その他から守ることを主たる役目とするもの。
芸能屋台:げいのうやたい
江戸時代に山車とともに曳かれていた屋台。歌や踊り、舞、三味線や太鼓などの芸能を演じる舞台に車輪を付けたもの。屋根のついたものや、背景となるものを作りこんだものなどがあった。
講:こう
同じ信仰、同じ職業などの集団。お伊勢講、富士講、御日待ち講などがあった。川越祭りの場合は、単位は講ではなく、町である。
(さ)
祭典委員会:さいてんいいんかい
祭りの計画、実行を目的として、自治会内に設けられた組織。町によっては他の名称であることがある。
宰領:さいりょう
祭り運行上の責任者。祭行列にいて、山車の発進、停止や挨拶する場所、曳っかわせのタイミングなどを指示する。
宰領笠:さいりょうがさ
宰領(さいりょう)であることを周囲に知らせるための目印として被る笠。祭禮初めの儀(さいれいはじめのぎ)でいただき、祭禮納めの儀(さいれいおさめのぎ)で返す。
祭禮納めの儀:さいれいおさめのぎ
笠ぬぎとも。祭りの翌日である月曜日に実施。神社からお借りした宰領笠(さいりょうがさ)をお返しし、祭りの無事を感謝する。笠は燃やすことで天に帰る。祭りが終わった後に、各町の祭り道具をお焚き上げ(おたきあげ)していたことが起源。
祭禮初めの儀:さいれいはじめのぎ
笠渡しとも。10月14日に祭りの安全祈願と宰領(さいりょう)が被る笠をいただく儀式。宰領中心の祭り運行を意識づけるためにはじめられた。
先触れ:さきぶれ
山車行列の先頭で山車の到来を告げる、他町への渉り(わたり)をつける、他町の山車行列にいるその町の宰領(さいりょう)への伝令、山車の進行先の情報収集と宰領への報告などを行うもの。
標山:しめやま、しめのやま
神の依り代(よりしろ)である山を模ったもの。単に山と呼ぶこともある。川越では箱庭のように小さな庭として発展していき、前庭(まえにわ)とも呼ばれる。京都祇園祭など、全国では盛り土や盛り砂などの山型をそのままに、依り代(よりしろ)としての山を継承しているところもある。
錫杖:しゃくじょう
じゃらん棒のこと。
じゃらん棒:じゃらんぼう
金棒(かなぼう)、錫杖(しゃくじょう)とも。金属製の杖で、頭部に金輪が付くことで音が鳴る仕組み。地面についた時の音で、邪を払うため、山車行列の先頭にいる露払い(つゆはらい)や手古舞(てこまい)が使用する。
襦袢:じゅばん
着物用の肌着。着物はそろいだが、襦袢は自由なことが多く、個人的なおしゃれをこだわるものも多い。
巡行:じゅんこう
山車で廻ること。曵行(えいこう)と移動を合わせていう。
職方:しょっかた
山車の周りで山車を操作する鳶(とび)、山車の上で電線への対応や勾欄(こうらん)・人形の上げ下ろしをする電工(でんこう)などの職人。山車を動かす際は、頭(かしら)を通して、町が依頼し、雇う。
神幸祭:じんこうさい
神霊(しんれい)が本社から他所へ移る行事を中心とした祭り。神社内のみで行われる祭りとは違い、氏子域(うじこいき)をめぐる。
(た)
高張提灯:たかばりちょうちん
もとは武家で使用されていた大型の照明用提灯だが、その後看板などの役割にも使われるようになった。川越祭りでは、大きな提灯を竿に取り付け、綱先(つなさき)の位置を示す目印として山車行列の先頭に位置するもの。左右に位置するため、二基で組となる。
山車:だし
川越祭りにおける曳き物(ひきもの)。もとは神の依り代(よいしろ)である山を人によって移動できるようにしたもの。初期のものは、四角い箱状のものに担ぎ棒をつけ、箱の内部に作った山に柱を立てたものを担いでいた。後に車輪が付き、牛に曳かせるようになる。これに芸能屋台が合わさり、囃子台(はやしだい)となる。つまり、現在の山車の前方部は芸能屋台を起源とし、後方部が古くからの山車の部分となる。そのため脇障子(わきしょうじ)でこの2つの区画を仕切っている。川越の山車の特徴としては、上げ下げできる二重鉾に回り舞台、最上部に人形を頂いている。江戸系川越型とも分類される。
裁着:たっつけ
手古舞(てこまい)が穿く袴。
立石:たていし
古代における神籬(ひもろぎ)、依り代(よりしろ)。石を立てた状態で設置したもので、後には道標として設置されるようになった。
つけ祭:つけまつり
神幸祭(じんこうさい)に付随した祭礼行事。曳き物(ひきもの)や仮装行列などがあった。川越祭りは川越氷川神社の例大祭における神幸祭のつけ祭が発展したもの。
辻:つじ
十字路、交差点のこと。川越祭りでは、山車が出合うことが多いため、状況判断が重要となる場所。
綱先:つなさき
曳き綱の先頭のこと及びそこに配置された役割で、綱のコントロールを行う。
詰所:つめしょ
祭りを行う者が休憩し、挨拶に来た者を接待する場所。本来、祭壇を置く会所(かいしょ)とは区別される。
露払い:つゆはらい
神霊(しんれい)や貴人などを先導するもの。川越祭りでは山車行列の先頭で、道を払いながら隊列を先導し、周囲に山車の到来を告げる。
手古舞:てこまい
山車行列の先頭部、露払い(つゆはらい)の後方に位置する男装の女性。以前は木遣り(きやり)を歌いながら歩く男性も手古舞と言われた。江戸時代深川で活躍した辰巳芸者(たつみげいしゃ)が男装して祭りに参加したことが起源ともいわれるが、氏子(うじこ)の娘たちがつとめた。現在は女児が扮することが多いが、広い年齢層で参加可能。
手ぬぐい:てぬぐい
川越祭りでは、祭りに参加するものであることを示すために、揃いの手ぬぐいを首にかける。町方(まちかた)、囃子方(はやしかた)双方に揃いの手ぬぐいがある。
出迎え人:でむかえにん
渉り(わたり)を受けた町が、町境まで山車を迎えに差し向けるもの。状況により出さない場合もある。
手持ち提灯:てもちちょうちん
持つことができるように弓に取り付けた提灯。弓張提灯(ゆみはりちょうちん)。川越祭りでは、達磨型を使用する。役割名や町名、人形名などが書かれている。筒形は手古舞(てこまい)が持つもので、個人名が書かれ区別される。役割を持つものは、露払い(つゆはらい)と警護(けいご)を除き、夜のみ役割名の書かれた提灯を持つ。露払いと警護は、周知のために、日中から手持ち提灯を持つ。夜の曳っかわせでは、役割名の入った提灯では跳ばず、町名や人形名の入ったものを使用する。
棟梁:とうりょう
山車づくりを受け持つ大工の責任者。
渡御:とぎょ
神幸祭(じんこうさい)において、神社から御旅所(おたびしょ)へ行く道。神幸祭では、神輿に乗った神霊(しんれい)は氏子域(うじこいき)を回るため、神社から御旅所へ行く道と、帰る道は違う。
(な)
中今:なかいま
今というのは、永遠の過去と永遠の未来の中間であるという考え方。神道で使われる。これは単に中間地点、通過地点ではなく、過去を引き継ぎここまで到達したという賛美の意味合いがある。時代による変化はあるが、先達がいたから今があり、未来に伝える役割もあるのだということ。
荷茶屋:にぢゃや
担い茶屋(にないぢゃや)とも。巡行(じゅんこう)時の荷物運搬用の台車。
担い茶屋:にないぢゃや
荷茶屋(にぢゃや)のこと。
軒端そろえ:のきばそろえ
町域の道に面した軒端に、紅白幕を張りめぐらすこと。これにより、町を聖域とする。
(は)
バール:ばーる
山車の進行方向を調整するための金属製のこじり棒。動いている時に、車輪に薄く入れることで、少しずつ方向を調整していく。てこ棒ということもあるが、本来てこ棒とは山車の下に入れて、てこの力を利用して山車を持ち上げ、方向転換をするための丸太であり、川越祭りにおけるキリンの役割に近い。
柱:はしら
建造物において上部の荷重を支える垂直材。古代においては神籬(ひもろぎ)、依り代(よりしろ)であった。山車においても、もともとは山に柱を立てたものを担いでいたのが原型であり、この柱が神籬、依り代の役割を担っている。現在の山車では人形柱がそれにあたる。このことから、山車の数え方は1本、2本、3本という。
端元:はもと
曳き綱のもと、山車に近いところ及びそこに配置された役割で、山車に曳き手が近づくことを防ぎ、辻(つじ)での方向転換時に綱を捌く。
囃子方:はやしかた
山車の囃子台(はやしだい)で祭り囃子を披露するもの。囃子を学ぶ団体に対し、町が依頼することで山車に乗ってもらう。初めは近郷の農村に頼み、町のものは囃子を行わなかったが、近年は自分の町に囃子の団体を持ち、山車に乗ってもらうところが多い。
半纏:はんてん
祭り衣装ではあるが、本来は職方(しょっかた)の衣装。
曳き綱:ひきつな
山車を曳くための綱。様々なものがあるが、藁綱を基本とし、三色をより合わせたものが多い。
曳き手:ひきて
山車を曳くもの。山車を作った町の住人が曳いたことから、町方(まちかた)と呼ばれる。
曳き物:ひきもの
祭りにおいて、曳き綱などで曳行(えいこう)されるもの。山車や屋台、鉾、だんじり、山笠、曳山(ひきやま)など様々な呼び名、形態がある。
曳山:ひきやま
曳き物(ひきもの)のこと。祭りにおいて、曳き綱などで曳行(えいこう)される。
曳っかわせ:ひっかわせ
山車と山車が出会ったときに、囃子の儀礼打ち(ぎれいうち)することを申し合わせたことを起源とする。神と神であれ、山車と山車であれ、挨拶であることに変わりはなく、礼節が重要になる。夜の曳っかわせでは、手持ち提灯を持った双方の曳き手(ひきて)が、山車と山車の間に集まり、跳ねる。これも挨拶であるので、役割提灯を持ったものや着物を着ていないものなどが参加することで礼を欠いてはいけない。
神籬:ひもろぎ
神が降りる場所、目印、依り代(よりしろ)。古代においては山や木、岩などの自然物や、石を積んだ岩境(いわさか)や石を立てた立石(たていし)、柱などの人工物を目印としていた。いずれにせよ、神が降りる場所は固定されていた。その後、簡易的なもの、移動できるものとなっていった。川越祭りにおいては、会所(かいしょ)の前庭(まえにわ)、山車の人形柱などが神籬、依り代の機能を担っている。
併催行事:へいさいぎょうじ
何らかの催しに関連する別の催しを合わせて行うこと。川越祭りでも、重点地区で祭りに参加しない町が、町内での祭りを併催している。
(ま)
前庭:まえにわ
依り代(よりしろ)である山が箱庭型に変化を遂げたもの。会所(かいしょ)の前にあり、神や人など訪れるものを歓待する。
股引:またひき
股引(ももひき)のこと。
股割れ:またわれ
股引(ももひき)のこと。
町方:まちかた
山車保有町の町民のことであり、山車を曳く曳き手(ひきて)の他、各役割を担う。
見送り人:みおくりにん
山車での挨拶を受けた町が、町境まで見送るために差し向けるもの。状況によっては出さない場合もある。
股引:ももひき
またひき、股割れとも。町方(まちかた)が山車を曳くなどの労働をするために穿く下衣。
(や)
屋台:やたい
現在は、川越祭りに参加する曳き物は山車に統一されているが、以前には、屋根付き芸能屋台(げいのうやたい)などが山車とは別に曳かれていた。山車が神の神籬(ひもろぎ)、依り代(よりしろ)であるのに対し、踊や囃子などの舞台機能が中心。現在の山車は、この芸能屋台と山である山車がくっつくことで出来ている。
山:やま
神の神籬(ひもろぎ)、依り代(よりしろ)である山を模ったもの。標山(しめやま、しめのやま)。川越では箱庭のように小さな庭として発展していき、前庭(まえにわ)とも呼ばれる。京都祇園祭など、全国には盛り土や盛り砂などの山型をそのままに、依り代としての山を継承しているところもある。山車は、山を人によって移動できるようにしたもの。
宵宮:よいみや
本来は、会所(かいしょ)を開き、祭り本番を翌日に控えた夜に、祭りに向けて心を整えるために行われるもの。この時、山車の巡行はしない。現在は、観光客が山車を間近に見ることのできる時間として認識されている。
依り代:よりしろ
神が依りつく対象物。神体や神域をさすこともある。川越祭りにおいては、会所(かいしょ)の前庭(まえにわ)、山車の人形柱などが神籬(ひもろぎ)、依り代の機能を担っている。
(ら)
例大祭:れいたいさい
年に1または2回、その神社で定められた大事な日に行われる大祭(たいさい)。川越まつりは、川越氷川神社の例大祭が神幸祭(じんこうさい)を伴うようになり、これに町民が付き従う、つけ祭が発展したもの。
(わ)
渉り:わたり
他町へ山車が入る際、その町の会所(かいしょ)に先触れ(さきぶれ)が先行し、口上(こうじょう)を述べることで、通行の許可を得る。