川越市旭町三丁目 信綱會

 
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松平信綱公にまつわるエピソード

 

Episode 16 島原の失敗話を披露する

 

 

 

 信綱が島原の乱を治め、その功によって忍藩三万石から川越藩六万石に転封されたことは有名です。

 その島原から帰ったのち、周囲は島原の出来事に興味津々だったでしょうが、史料には信綱が戦功を語ったということが見られません。そのかわり失敗談を聞かせたことがあったようです。

 

 旗本に井上新左衛門という人がいます。

この人は、からかわれたりいじられたり、とかく道化役としてよく資料に登場するのですが、信綱とも親しかったようです。

 信綱が彼に語ったところでは、

 

 原城(島原の乱で一揆勢が籠城した廃城)を総攻撃する際は、信綱本陣にある大きな鐘を撞木で鳴らすことを合図としていました。ところが、日とともに信綱は不安になってきます。

「誰かが忍び入り、鐘を鳴らしたら軍は混乱してしまうのではないか。」

 そこで、鐘を鳴らせないよう撞木をいつも自分のそばに置くことにしました。

 ですが、また不安がよぎります。

「鐘は何も撞木でなくとも鳴らせる。鉄砲などでもいいではないか。これで万全ではない。」

 今度は、鐘を地面に下し、薦(こも)でぐるぐる巻きにしておきました。これで安心と思ったその夜、一揆勢が夜襲を仕掛けてきました。慌てて鐘をつつんだ薦を解き、鐘を釣り上げてと準備をしているうちに戦いは終わってしまったのでした。

 この話しは以前、井上が「用心しすぎてかえってあらぬ疑いをかけられ身を滅ぼした」という中国の故事を信綱に聞かせたことを踏まえ、「俺もこんな失敗をしてしまった。」と笑いあったものなのでしょう。