川越市旭町三丁目 信綱會

 
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松平信綱公にまつわるエピソード

 

Episode 05 竹千代のもとめで雀をとろうとする

 

 

 

竹千代が三歳、長四郎が十一歳ととき。秀忠の神殿の軒端に雀が巣をかけ、雛を育てていました。それを見た竹千代が雀の巣をほしがりましたが、長四郎は一度辞退します。秀忠の神殿に忍び寄るのは恐れ多いと思ったのかもしれません。

しかし、近習たちから

「昼に取ろうとすれば、雀が驚いて飛び立ってしまう。巣の位置をよく見定めておいて、日が暮れてから手前の軒からしのび、取ればよい。大人では身体が重く足音がたつ。汝が取りによくように。」

と口々にいわれたため、仕方なく取りに行くことにしました。

 手前の館の屋根から秀忠の軒にうまくわたって巣を取ろうとしたその瞬間、足を滑らせガラガラドタンと軒下に落っこちました。物音に驚いた秀忠、お江与の方が外を出るとそこには長四郎の姿。

「汝は、なにゆえここに来たか。」

 秀忠の問いに長四郎は、

「今日の昼ごろ、この御殿の屋根の軒端に雀が雛を育てているのを見て、ほしさのあまり取りにまいりました。」

と答えました。

 秀忠は竹千代が命じたに違いないと思い、誰が命じたかを問いましたが、長四郎は自分がほしかったのだと頑として主張を変えません。そこで秀忠は、長四郎を大きな袋の中に押し込め、口を封じて柱に吊るしてしまいました。

「事の次第をありのままに申さぬならば、いつまでもこうしておくぞ。」

 秀忠はそう告げましたが、長四郎は主張を変えません。明けて昼ごろ、秀忠が再び大奥にやってきて長四郎を詰問しますが返答は変わりません。そこにお江与の方も詫び言を言ってくれたため、ようやく長四郎は解放されることになりました。

 その後、秀忠はお江与の方にむかい、

「あやつ、今の心のまま成長すれば、竹千代のためには並びなき忠臣になろう。」

と語り、ことのほかの喜びようであったということです。